本記事は、「寝たきり老人は日本だけ?」という疑問をお持ちの方に向けて、海外と日本の違いと人数をまとめました。
「寝たきり老人」という言葉は、日本では一般的ですが、世界的にみると実は日本特有の現象です。
なぜ、海外では寝たきり老人が少ないのでしょうか?
実は、その背景には、医療や介護に対する考え方や死生観の違いがあります。
この記事では、寝たきり老人が増える原因や、寝たきりにならないための対策について解説しています。
「人生100年時代」と言われる現代において、健康寿命を延ばし、最期まで自分らしく生きるために、ぜひ参考にしてみてください。
*この記事では、世の中の方々の一般認知度・使用度を考慮した上で「寝たきり老人」という表現をさせていただいておりますが、「寝たきりのご高齢者」と同義で使用させていただいております。
- なぜ日本では寝たきり老人が多いのか
- 日本と欧米の医療や介護、死生観の違い
- 寝たきりにならないための予防策
- 寝たきり老人の増加がもたらす社会への影響
お好きなところからお読みいただけます。
寝たきり老人は日本だけ?欧米には殆どいない理由は?
「寝たきり老人」は日本だけというのは本当か?
日本において「寝たきり老人」という言葉は、残念ながら一般的になってしまいました。
私が25年訪問マッサージ師として活動する中で、寝たきりの方の介護をされているご家族の、精神的、肉体的負担を目の当たりにしてきました。
ですが、これは日本特有の現象と言えるでしょう。なぜなら欧米では、寝たきりになる前に亡くなる方が多いからです。
欧米諸国と日本では、医療や介護に対する考え方が大きく異なり、これが寝たきり老人の数の違いに繋がっていると考えられます。
日本では、医療技術の進歩により延命治療が可能になったことで、平均寿命が延びています。
ですが、その一方で、健康寿命は平均寿命よりも短く、男性で約9年、女性で約12年も差があるというデータもあります(厚生労働省「簡易生命表」)。
つまり、多くの方が人生の最後の10年近くを寝たきりや要介護の状態で過ごしていることになります。
一方、欧米諸国では、延命治療よりもQOL(生活の質)を重視し、自然な形で最期を迎えることを尊重する傾向があります。
例えば、スウェーデンでは、高齢者が自分で食べることができなくなっても、点滴や胃ろうといった延命治療は行いません。
これは、人工的な手段で寿命を延ばすよりも、自然な形で最期を迎えることを大切にするという価値観に基づいています。
このような考え方の違いが、日本と欧米諸国における寝たきり老人の数の差を生み出していると考えられます。
海外に寝たきり老人が少ないのは「考え方」の違い?
海外では、寝たきりになることを「人間の尊厳を損なう」と考える傾向があります。寝たきりの状態を避け、最後まで自分らしく生きることを重視する文化があると言えるでしょう。
日本と欧米諸国では、医療や介護に対する考え方が大きく異なり、これが「寝たきり老人」の人数の差に繋がっていると考えられます。
日本では延命治療を最優先にする場合もありますが、欧米諸国ではQOL(生活の質)を重視し、自然な形で最期を迎えることを尊重する傾向があります。
例えば、アメリカでは、延命治療よりも、自宅や介護施設で最期まで自分らしく生活できるよう、緩和ケアに力を入れています。
家族や医療従事者が、本人の意思を尊重し、QOLを向上させるためのケアを提供しています。その中で過剰な延命治療が「寝たきり老人」を生み出している一因だと指摘する意見もあります。
また、欧米諸国では、尊厳死や安楽死を選択肢として認めている国もあります。
これは、本人の意思を尊重し、苦痛を伴う延命治療を避け、安らかな死を迎える権利を認めるという考え方です。
このように、日本と欧米諸国では、終末期における医療や介護の価値観が異なっており、それが寝たきり老人の数の差に繋がっていると考えられます。
日本と欧米の「死生観」の違い
日本と欧米では、死に対する考え方が大きく異なります。日本では、死を避けるべきもの、恐れるべきものと捉える傾向がありますが、欧米では、死は自然なプロセスであり、受け入れるべきものと考える傾向があります。
例えば、スウェーデンでは「高齢者は寝たきりになる前に亡くなる」のが当たり前という考え方があり、日本のように、延命をしてまで寿命を長くすることを良しとしない傾向があります。
一方、日本では「生」に価値を置き、少しでも長く生きることが尊ばれる傾向があります。しかし、長生きすることだけが本当に幸せなことなのでしょうか?寝たきりの状態にならずに、自分らしく最期まで生きることが、より幸せな生き方かもしれません。
このように、死生観の違いが、医療や介護の現場における選択にも影響を与え、結果として寝たきり老人の数にも違いが生じていると考えられます。
また、死生観の違いは、終末期医療に対する考え方にも影響を与えています。
日本では、終末期においても延命治療を選択する方が多いですが、欧米では、尊厳死や安楽死を選択肢として認めている国もあります。
これは、本人の意思を尊重し、苦痛を伴う延命治療を避け、安らかな死を迎える権利を認めるという考え方です。
なぜ日本では「寝たきり老人」が多いのか?
日本は平均寿命が世界トップレベルであり、高齢化が急速に進んでいます。
2022年の日本の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳と過去最高を更新しました。
ですが、既に申し上げた通り健康寿命は平均寿命よりも短く、男性で約9年、女性で約12年も差があるというデータもあります(厚生労働省「2019年簡易生命表」)。
また、医療技術の進歩により延命治療が可能になったことも、寝たきり老人の増加に繋がっていると考えられます。
日本では、終末期においても延命治療を選択する方が多い傾向があります。
一方で、寝たきりになる原因は、病気や怪我だけではありません。
加齢による筋力低下や運動不足、栄養不足なども、寝たきりのリスクを高める要因となります。
訪問マッサージの現場では、寝たきりになってしまう原因の一つに、運動不足による筋力低下や関節の拘縮が挙げられるケースを多く見てきました。
寝たきり老人の増加は、日本の医療制度や社会保障制度の問題点も浮き彫りにしています。
高齢化社会に対応するためには、医療や介護の体制を見直し、寝たきり予防にも力を入れる必要があるでしょう。
そもそも「寝たきり」になってしまう原因は?
寝たきり状態になってしまう原因は様々ありますが、主な原因としては、脳卒中、認知症、骨折などが挙げられます。
脳卒中は脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の機能が損なわれる病気です。脳卒中を発症すると、麻痺や言語障害などの後遺症が残ることがあり、寝たきりになってしまうケースも少なくありません。
認知症は、記憶力や判断力などの認知機能が低下する病気です。認知症が進行すると、日常生活を送ることが困難になり、寝たきりになる可能性が高まります。
また、高齢者は骨が弱くなりやすく、転倒によって骨折しやすくなります。骨折によって寝たきりになってしまうケースも少なくありません。
さらに、加齢による筋力低下や運動不足も、寝たきりのリスクを高める要因となるので予防対策が重要です。
日本と欧米の医療や介護に対する考え方の違いとは?
日本では、医療や介護は「家族が担うもの」という考え方が根強く残っています。ですが、核家族化や共働き世帯の増加により、家族だけで介護を担うことが難しくなっているのが現状です。
厚生労働省の「介護サービス世帯調査(平成12年)」によると、要介護者を抱えて困っていることとして、「介護者の精神的負担が大きいこと」が最も多く64.4%を占め、以下、「いつまで要介護が続くか分からない」(52.0%)、「介護者の肉体的負担が大きい」(40.9%)と続きます。また、施設を希望する理由としては、「介護者が疲れ果てた」(59.9%)がトップに挙げられています。
一方、欧米では、医療や介護は「社会全体で支えるもの」という考え方が浸透しており、公的なサービスが充実しています。
例えば、スウェーデンでは、介護が必要になった場合でも、家族が全面的に介護することはなく、コミューンと呼ばれる自治体が高齢者の希望に沿う形で、サービスを提供しています。
また、スウェーデンでは、介護士が安定した公務員であり、経済的に困窮することもありません。介護士は、独居老人の家を頻繁に訪問し、トイレ掃除やベッドメイク、そして高齢者との会話など、生活全般をサポートします。
このように、日本と欧米では、医療や介護に対する考え方が大きく異なり、その結果、介護者の負担や高齢者の生活にも違いが生じていると考えられます。
【関連記事】老老介護の現状と共倒れ問題について徹底考察してみた!解決策は?
「平均寿命」と「健康寿命」の違い
「平均寿命」は、その国や地域に住む人々が平均して何歳まで生きられるかを示す指標です。前述した通り、2022年の日本の平均寿命は、男性81.47歳、女性87.57歳と過去最高を記録しています。
一方、「健康寿命」は、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を示す指標です。
2019年のデータによると、健康寿命は男性72.68年、女性75.38年でした。つまり、平均寿命と健康寿命の差は、男性で約9年、女性で約12年もあります。
この差は、「不健康な期間」を意味し、日常生活に制限のある期間が、男性で約9年、女性で約12年もあることを示しています。
健康寿命を延ばすためには、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠といった基本的な生活習慣を心掛けることが大切です。
また、定期的な健康診断や、私のような訪問マッサージ師による定期的なケアも有効です。
健康寿命を延ばすことは、QOL(生活の質)を高め、寝たきりや介護が必要な状態を予防することにつながります。ぜひ、今日からできることから始めてみてください。
「健康寿命」を延ばすには?
健康寿命を延ばすためには、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠といった基本的な生活習慣を心掛けることが大切です。
食生活では、塩分を控えめにする、野菜を多く摂る、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。また、適度な運動は、筋力や心肺機能の維持・向上に役立ちます。ウォーキングや軽い体操など、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。
十分な睡眠は、心身の疲労回復に不可欠です。質の良い睡眠を確保するために、寝る前のスマートフォンやパソコンの使用は控えましょう。
また、定期的な健康診断や予防接種を受けることも、病気の早期発見・早期治療に繋がり、健康寿命の延伸に貢献します。
さらに、私の専門である訪問マッサージも、寝たきり予防に効果的な対策の一つです。
マッサージによって血行を促進し、筋肉の緊張を和らげることで、身体機能の維持・向上に繋がります。
また、関節可動域訓練や筋力トレーニングを行うことで、より効果的に寝たきり予防を行うことができます。
訪問マッサージが寝たきり予防対策に!
訪問マッサージは、身体機能の維持・向上、血行促進、関節可動域の改善、筋力強化、精神的なリラックス効果など、様々な効果が期待できます。
特に、寝たきりのリスクが高い高齢者の方や、すでに寝たきりになってしまった方にとって、訪問マッサージは非常に有効な手段と言えるでしょう。
例えば、脳梗塞の後遺症による麻痺や関節の拘縮がある場合、マッサージや関節可動域訓練を行うことで、筋肉の緊張を和らげ、関節の動きをスムーズにする効果が期待できます。
また、パーキンソン病などの神経疾患によって運動機能が低下している場合でも、マッサージや運動療法によって、筋力やバランス感覚を維持・向上させることができます。
さらに、身体的な効果だけでなく、ストレスが軽減されて精神的なリラックス効果も期待できます。
「家族の言うことは聞かないご年配の方でも、他人(第三者)の言うこと、特に専門職の言うことなら聞くという方もいらっしゃいます。そんな方にこそ訪問マッサージを一度無料で体験してみてほしい。動けなくなる前に。寝たきりになる前に。」と私は常々心から思っております。
ベッド上で運動したり、座る練習、立つ練習をしたり、マッサージを受けたりすることが寝たきり予防の手立てになるんです。
既に申し上げた通り、寝たきりになってしまうと、QOL(生活の質)が著しく低下してしまう可能性があります。
健康寿命を延ばし、自分らしく豊かな人生を送るために、訪問マッサージも有効な手段の一つになりますので、ご質問やご相談があればぜひ、お気軽にご相談ください。
日本で介護が必要な寝たきり高齢者の人数は?
2025年には300万人に?
厚生労働省の調査によると、2025年には、介護が必要な高齢者の数は約700万人になると推計されています。その内、寝たきり状態の高齢者も300万人に達する可能性が指摘されています。
これはあくまで推計値ですが、寝たきり老人の数が増加傾向にあることは間違いありません。
寝たきりになってからでは遅いのです。
健康寿命を延ばし、いつまでも自分らしく生き生きとした生活を送れるように早め早めの対策をしておきましょう。
今後の日本の高齢化について
日本は、世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでいます。2025年には、65歳以上の高齢者の割合が30%を超え、2060年にはなんと40%に達するとの推計もあります。これは、国民の2.5人に1人が高齢者になることを意味します。
高齢化が進むと、医療や介護の需要が増加し、社会保障制度の維持が困難になる可能性があります。また、労働力不足や経済の停滞といった問題も懸念されます。
このような状況下で、寝たきり老人の増加は、日本社会にとって大きな課題です。
寝たきり老人の増加は、医療費や介護費の増大を招き、社会保障制度にさらなる負担をかけることになります。
また、寝たきりになってしまうと、家族にも大きな負担がかかります。
寝たきり予防は、高齢者本人だけでなく、社会全体にとっても重要な課題と言えるでしょう。
高齢者の介護はどこで?
高齢者の介護は、自宅、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設など、様々な場所で行われています。
厚生労働省の「厚生白書」によると、介護保険施設に入所している高齢者は60.1万人おり、特別養護老人ホームをはじめとする介護老人福祉施設が最も多く、全体の48.6%を占めています。
ですが、特別養護老人ホームは入居待ちの待機者が多く、すぐに入居できないという問題があります。
また、介護保険施設の費用が高額であるため、経済的な負担が大きいという問題もあります。
そのため、自宅で介護を受ける高齢者も多く、家族が介護を担っているケースが一般的です。
このような状況を改善するため、政府は地域包括ケアシステムの構築を進めています。
地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援が一体的に提供される仕組みです。
地域包括ケアシステムの構築により、高齢者が自宅で安心して介護を受けられる環境が整備されれば、介護施設の不足や入居費用の高騰といった問題の解決にもつながると期待されています。
介護が必要な高齢者の家族は?
介護が必要な高齢者の家族は、肉体的にも精神的にも大きな負担を強いられています。
前述した通り、厚生労働省の「介護サービス世帯調査(平成12年)」によると、要介護者を抱えて困っていることとして、「介護者の精神的負担が大きいこと」が最も多く64.4%を占め、以下、「いつまで要介護が続くか分からない」(52.0%)、「介護者の肉体的負担が大きい」(40.9%)と続きます。
また、介護者と要介護者の関係性も、介護負担に大きく影響します。同調査によると、主な介護者は「息子の妻」が27.7%と最も多く、次いで「妻」が20.8%、「娘」が19.0%となっています。
介護する側も高齢であるケースが多く、65歳以上の介護者が全体の52.8%(男性)と33.9%(女性)を占めています。
このような「老老介護」の場合、介護者の体力的な負担が大きくなるだけでなく、介護者自身の健康状態も悪化してしまうリスクがあります。
介護は、食事や入浴、排せつなどの介助に加え、家事や金銭管理など、多岐にわたるため、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。特に、認知症の高齢者の介護は、徘徊や夜間不眠などの症状に対応する必要があり、さらに負担が大きくなります。
ちなみに、訪問マッサージは、介護が必要な高齢者だけでなく、介護者の方にもご利用いただけます。
マッサージによって心身のリラックス効果が期待できるだけでなく、介護者の身体的な負担を軽減し、精神的なサポートにも繋がります。
【関連記事】訪問マッサージの意外なメリットとは?自律神経失調症も改善する!?
家族の悩みは?
前の項目でも申し上げた通り、介護が必要な高齢者の家族は、様々な悩みを抱えています。
介護の方法や施設選びに関する悩み、経済的な悩み、将来への不安など、その内容は多岐にわたります。
肉体的にも精神的にも大きな負担となりますし、介護者の約3人に1人が、要介護者に対して「時々」または「いつも」憎しみを感じているというデータすらあります。
また、介護が必要な状態が長引けば長引くほど、介護者の精神的負担は大きくなります。終わりが見えない介護に、精神的に疲弊してしまう方も少なくありません。
金銭面での負担も家族の大きな悩みの種です。
介護保険サービスを利用しても、自己負担額や介護用品の費用など、様々な出費がかさみます。
特に、収入が減少する高齢者の介護は、経済的に厳しい状況に陥りやすいです。
私は、25年間の訪問マッサージの経験で、介護疲れからくる精神的なストレスや自律神経の乱れによって、不眠や食欲不振、イライラ感などの症状を訴える方が多くいらっしゃることも認識しています。
介護を続ける上での活力を取り戻すお手伝いもできると思いますので、介護疲れを感じている方も一人で抱え込まずに、ぜひ一度ご相談ください。
寝たきり老人は日本だけ?欧米には殆どいない理由と人数は?の総括
最後にこの記事のポイントをまとめました。
- 「寝たきり老人」という言葉が一般的になっているのは日本だけ
- 欧米では寝たきりになる前に亡くなる方が多い
- 日本と欧米では医療や介護に対する考え方が大きく異なる
- 日本では延命治療が可能なため平均寿命が延びている
- 日本では健康寿命と平均寿命に約10年の差がある
- 欧米ではQOLを重視し、自然な形で最期を迎えることを尊重する傾向がある
- 日本と欧米では死生観が大きく異なる
- 日本では高齢化が急速に進んでいる
- 訪問マッサージは寝たきり予防にも効果的である
- 2025年には寝たきり状態の高齢者数が300万人に達する可能性がある
【あわせて読みたい関連記事】
老老介護の現状と共倒れ問題について徹底考察してみた!解決策は?
リハビリパンツとオムツの違いは?交換頻度の注意点を詳しく解説!
【本記事の関連ハッシュタグ】